「忘れられた桜の木」を撮る・続き

前回からだいぶ日が空いてしまいましたが、予告通りより子の『忘れられた桜の木』のドラマシーンの撮影の様子をレポート。
場所は長野県上田市。ここはかなり協力的なフィルムコミッションがあり、古き良き町並みが残されている事からMV(PV)だけでなく映画、CMと撮影が目白押しである。私の前作であるビアンコネロの『Gにも至らず』も上田市の廃校で撮影している。
地方ロケの場合、本来だとロケハン*1してから、また東京に戻ってロケ地に合わせて企画を練り直し、準備万端で後日撮影に挑む・・・と言うのがセオリーではあるのだが、もう既にスタジオでの演奏シーンを撮って予算の大半を使ってしまっていた。というわけで、撮影前日の早朝に東京を出て、予定したロケ地を全て回って、翌日に筧利夫氏出演の現在シーンの撮影。そのまた翌日に主人公の男が中学生だったころの25年前のシーンを撮って、その日のうちに東京へ戻るという二泊三日の強行スケジュール。

さて、ロケハンも問題なく終り撮影当日、まずは桜の木を見つめる筧さん、というクライマックスのシーンから撮影。当初、シーン順に撮っていきたかったのだが、午後になってから崩れるという天気予報を信じて重要なシーンから撮影していく事に・・・。
緊張の面持ちでスタッフ全員が待つ中、筧氏登場。多分、最近の出演作品の中では一番小規模の撮影なのではないかと思うような我ながら心細い布陣。*2そんな状況にも関わらず真剣に主人公の心情に付いて想いを巡らす筧氏、最終的に過剰な演技は避け、自然体で行こうという事に・・・。じっと見つめるまなざしに説得力があるんですよねぇ、これが・・・。
天候にも恵まれ、電車の中のシーンも慌ただしく終り、*3撮影は順調に進んだ。ただ、ちょっと順調すぎるのが問題で、香盤より早い展開に必然と待ち時間が多くなる。役者は待つのも仕事のうちと言うけれど、ロケバスも用意出来ない我々弱小スタッフにとって筧利夫を待たせているという事はかなりのプレッシャーになるんですよね〜。俺以上にプロデューサーの児玉氏は生きた心地がしなかったのでは?
そんなこんなで、心配していた雨も降らずに、最後にお茶の間で今回のキーアイテムになるカメラを見つけるところ撮って終了。スタッフ一同、筧さんを見送ってホッと安堵のため息。かなり充実した1日でした。

そして翌日。
中学生時代の撮影。二人の出演者はまだ緊張のご様子。エキストラで協力してくれている地元の中学生達の方が自分の学校での撮影だけにのびのびとやっている。でも、この緊張した雰囲気が、中学生の恋らしいもどかしさや切なさを生み出している。撮影が進むにつれて二人も和んで表情も柔らかくなってきた。ホント順撮りにしといて良かった。特に夕方の駅のホームでのシーンは光の差し方も相まって思った以上のカットが撮れました。

この作品は、見る人によってストーリーの捉え方が変わる作品だと思っているので、ここでは詳しい内容の説明は避けます。劇中に挟まれる写真などの断片的なイメージをつなげて、自分だけの物語を作ってもらえると嬉しいですね。

*1:ロケーションハンティング=下見

*2:何しろ8mmカメラをちょっと大きくしたようなの1台にノーライト、スタッフも全部で5人ぐらいですから・・・

*3:電車のシーンって時間が限られてる上に移動してるんで、じっくり演出に専念出来ないところがキツい。