「忘れられた桜の木」を撮る

今回も引き続き「より子」ネタ。
無事に筧利夫氏との打ち合わせも終わり、筧さんの出るドラマシーンの撮影に先んじてより子とバイオリンの増田太郎氏の出演する演奏シーン。ただ、ここで問題になるのが「サクラ」を題材にした曲で必ずと言って問題になるのが桜をどうやって表現するかという事。大抵、桜の季節に前後して発売する為、ミュージックビデオの撮影は冬の時期になる。もちろん桜なんて咲いているはずも無く、けれども桜に触れないで表現するのも難しい。ケツメイシ「桜」の場合は河原にドーンと桜の木の作り物を立てて撮影。中島美嘉の「桜色舞うころ」はミニチュアとCGで・・・。しかし、これはトップアーティストゆえのビッグバジェットのなせる技。河口恭吾「桜」に至っては当初、桜の花の咲いていない桜並木をバックに歌っていたシーンを売れた事で同じロケーションで桜の咲いている時期に撮り直すという異例な事もあった。
さて、我らがより子嬢の場合はどうしたかというと、ドラマシーンと共存する事を前提に演奏シーンを撮影するため、なるべくシンプルに・・・と言う事を前提に考えていった。大きく暗闇の世界と光の世界という二つに分け、それがちょうど間奏のブレイクの瞬間に舞い散る桜の花びらをきっかけに切り替わるという、演出家としては「よっしゃ!ここで決めたる!」とも思える肝のシーン。ただ、編集の段階までなってくると、もう素材を見すぎてしまって感動するのかどうか自分で判断出来なくなってしまうんですよね。ま、とりあえず出来上がりの評判は上々なのでまんざらでもないようです。
ここで注目すべきはもう一人の主役である増田太郎氏。彼は幼少から始めたバイオリンの他にピアノ、ボーカルもこなしライブ以外にもラジオのパーソナリティなど精力的に音楽活動をしている人物。ただ、20才の頃からもともと弱視だった視力が完全に見えなくなり全盲へ・・・。撮影の時はごちゃごちゃケーブルなどが横切るところを超えて舞台へ行ったり来たりと苦労させてしまいましたが、終始笑顔でより子との即興のセッションをしたりと場を和ませてくれました。ただ、どんなものが出来ているのか見てもらえないのは残念・・・。暗闇の世界から真っ白の光の世界へと変化するところは、そういった増田君の背景も加味させたつもりです。
さて、順調にスタジオでの演奏シーンも終了し、後はドラマシーンを残すのみ・・・。その話は、また次回に・・・。

H/K
最近、久しぶりにスカパーのアンテナ線を繋いで見たら、今年始めに私がカメラマンで関わった「セカイイチ」の「石コロブ」がスペースシャワーTVのパワープッシュになっているではありませんか!
これは今年一番最初の仕事にして、今年最高のカメラワークをしてしまった!(本人談)と思える程の撮影冥利に尽きる作品です。多分ヘビーローテーションは4月中だと思うんで5月になる前にスペースシャワーTVをチェックです。